油田の世界を、
もう少し探検しよう。
日本の街角から、海の底、地球の裏側まで。
「ここにも石油が?」「こんなふうに掘るの?」を、写真と図解でのぞいてみましょう。
日本にも油田がある
石油が出るのは、砂漠だけではありません。
北海道や東北、新潟にも、地下の資源を取り出す現場があります。
秋田市外旭川の油井。うなずくような形の機械は「ポンプジャック」と呼ばれ、地下のポンプを動かすために使われます。2015年8月15日撮影。現在の設備・稼働状況を示す写真ではありません。写真:掬茶 / Wikimedia Commons · CC BY-SA 4.0。縮小・WebP変換。同ライセンスで掲載。
「油田」は、地下に広がる資源のエリア
油田は、石油を含む地下の地層が広がり、そこから石油を取り出せる場所。地上から見えるのは、油井や配管、処理設備など、その一部です。
油井(ゆせい)は、石油を取り出すために掘った井戸。ひとつの油田に、何本もの油井がつくられることがあります。「地図の点ひとつ=井戸ひとつ」とは限りません。
日本にも国産の原油はありますが、国内で使う原油の大部分は輸入に頼っています。油田の有無だけでなく、採れる量と使う量を一緒に見ることが大切です。
① 勇払(ゆうふつ)油ガス田
1989年に発見され、1996年に生産が始まりました。原油と天然ガスの両方を生産し、天然ガスは北海道内の供給にも使われています。「北の大地にも油ガス田がある」と覚えると、地図の見え方が変わります。
② 秋田は、日本の石油を知る入口
街なかの油井が知られる八橋(やばせ)周辺のほか、秋田には申川(さるかわ)、鮎川、由利原などの油・ガス田があります。由利原油ガス田は1976年発見、1984年生産開始。地名の後ろに「油田」が付く、日本の資源の歴史を感じられる地域です。
③ 岩船沖(いわふねおき)油ガス田
胎内川の河口から約4km沖にある、海の油ガス田です。1983年に発見され、1990年に生産開始。JAPEXは、国内で海上プラットフォームによる生産操業を行う油ガス田として紹介しています。次の「海の下からどう掘る?」につながる、日本の実例です。
石油は、岩石のすき間にある。
多くの油田では、岩石の小さな穴や割れ目に油やガスが入っています。よくある「地下に巨大な石油の湖がある」というイメージとは違います。油が井戸へ動くには、すき間がつながっていることも重要です。
ミニクイズ:原油をそのまま車に入れれば、走れる?
答え:普通のガソリン車には、そのまま使えません。
地下から取り出す原油には、性質の異なる成分が混ざっています。製油所で分けたり加工したりして、用途や品質基準に合うガソリン、灯油、軽油などにします。油田は、燃料が暮らしに届くまでの長い道のりの出発点なのです。
日本編は国内事業者の公開資料も参照しています。上の世界地図が採用するデータとは収録条件が異なるため、この章で紹介した国内油田がすべて地図に表示されるわけではありません。
海の下からどう掘る?
海水の中から石油を集めるのではありません。
海底の、さらに下にある地層まで井戸を掘って取り出します。
まず「掘るとき」と「採り続けるとき」を分けて考えてみましょう。調査・掘削を行う船や設備と、長い期間にわたって生産・処理する設備は、役割が違います。下の図は、浮体式設備を使う場合の一例です。
掘削船から、海底のその先へ
- ① 掘削船海上で位置を保ち、パイプや掘削機器を扱う。
- ② ライザー船と海底をつなぐ管。その内側に掘削用の管を通す。
- ③ BOP噴出防止装置。異常な流体の噴出に備える。
- ④ 井戸の保護鋼管とセメントなどで孔を保護・隔離する。
- ⑤ 地下の井戸目的の地層まで掘る。斜め・横に進む井戸もある。
ライザー掘削の概念図。寸法・縮尺・地層は模式的です。すべての海洋掘削がこの方式というわけではありません。
海底の井戸と、海上の処理設備をつなぐ
- ① 油を含む岩石地下から井戸へ流れ込む油やガスを取り出す。
- ② 海底のバルブ井戸の口で流れや圧力を制御する。
- ③ 生産用の管海底と海上の設備を結び、流体を送る。
- ④ FPSO浮体式の生産・貯蔵・積出設備。油・ガス・水などを分離。
- ⑤ 輸送する船貯めた原油を受け取り、陸の施設へ運ぶ。
海底設備とFPSOを使う生産方式の一例。掘削中のBOPと、生産時の海底バルブは別の役割です。配管・係留設備などは一部省略。
- STEP 1 / 探す
音の反射で、地下の形を調べる
調査船から発した波が地層の境界で反射する様子を測り、地下構造を推定します。いわば「地下の断面を読む」作業。ただし、調査だけで必ず石油があると断定できるわけではなく、実際に井戸を掘って確かめます。
- STEP 2 / 掘る
管を継ぎ足し、先端の刃で岩を削る
長いドリルパイプの先に付けた「ビット」で岩を削ります。パイプを継ぎ足しながら深く進み、必要に応じて井戸の向きも調整。海底に人が降りて、つるはしで掘るわけではありません。
- STEP 3 / 守る
「泥水」も、掘削チームの一員
特殊な掘削流体である泥水は、削りくずを運び、刃先を冷やし、圧力を管理するなどの役割を担います。井戸には鋼管を入れ、周囲をセメントで固める工程も。圧力監視や噴出防止装置を組み合わせて管理します。
- STEP 4 / 採る
完成した井戸から、流れを制御して取り出す
生産できる見通しが立ったら、井戸を生産用に仕上げ、処理設備につなぎます。地下の圧力を利用する場合も、ポンプなどの助けを使う場合もあります。どの油田も、地上のポンプジャックで採るわけではありません。
- STEP 5 / 運ぶ
油・ガス・水を分けて、次の工程へ
井戸から出てくる流体には、油だけでなくガスや水などが含まれます。設備で分離・処理し、原油はパイプラインや船で陸へ。そこから製油所などを経て、私たちが使う燃料や製品の原料になっていきます。
海の上の「工場」にも、いろいろある。
比較的浅い海では、海底に脚を立てた固定式の施設。深い海では、海に浮かぶ設備や、海底に置く生産装置などを組み合わせます。水深だけでなく、波・風・海底の状態、油田の規模などで適した方式が変わります。
「海上に見える建物」は全体の一部。海中の配管や、地下へ延びる井戸まで想像すると、写真の奥行きがぐっと広がります。
水深2,000mなら、2,000m掘れば届く?
いいえ。水深は、海面から海底までの距離です。
石油を含む地層が海底の下にあれば、そこまでさらに掘ります。「水深」「海底下の深さ」「曲がった井戸に沿った長さ」は違う数字です。ニュースの「深さ」を読むときは、どこからどこまでかに注目しましょう。
有名油田を巡るツアー
砂漠、北海、アラスカ、ブラジル沖。
場所が変わると、油田の景色も、開発の工夫も変わります。
気になる油田から、自由に巡ってください。「上の地図で見る」を押すと、油田ナビの該当データを開きます。所在地だけでなく、発見年、運営会社、数値の対象年も見比べると、読む楽しさが増していきます。
画面の中で巡る読み物ツアーです。現地への立入り・見学を案内するものではありません。掲載順は規模や生産量のランキングではありません。
ブルガンBurgan
小さな国と、スケールの大きな石油産業。
クウェートを代表する大規模な陸上油田です。国土の広さと、地下にある石油資源の規模は別のもの。地図で国の位置を確かめると、ペルシャ湾周辺に油田が集まる様子にも気づけます。
ここを見てみよう
国の面積だけでは、資源の豊かさはわからない。近くの国の油田とも見比べてみよう。
ルマイラRumaila
長い年月にわたって、産業を支える油田。
イラク南部の大規模油田で、1953年に発見され、1954年に商業生産が始まりました。油田は「見つけて掘ったら完成」ではなく、設備の整備や井戸の管理を続けながら、長い期間にわたって操業する現場です。
ここを見てみよう
発見年と生産開始年の違い、運営する企業、生産データの年に注目しよう。
エコフィスクEkofisk
北海の歴史を変えた、海の油田。
1969年に発見され、1971年に生産が始まりました。ノルウェー側の北海南部に位置し、水深は約70m。長い操業の間に設備の増設や更新が行われてきました。海洋編の実写写真も、この油田の施設です。
ここを見てみよう
「海の油田=すべて深海」ではない。比較的浅い海の油田もある。
プルドーベイPrudhoe Bay
寒い大地から、長いパイプラインの旅へ。
アラスカ北部にある代表的な油田。1968年に発見され、1977年に生産が始まりました。北部の原油を南のバルディーズへ運ぶトランス・アラスカ・パイプラインは、約800マイル(約1,300km)に及びます。
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油田の場所だけでなく、「採った石油をどう運ぶか」まで地図で追ってみよう。
トゥピ/ルラTupi / formerly Lula
深い海と、厚い塩の層の、その先へ。
ブラジル沖のプレソルト開発を象徴する油田のひとつです。プレソルトは、地下の厚い塩の層よりも下にある地層を指します。トゥピのパイロット開発では水深約2,200mの海域で、FPSOを用いた生産が行われています。
ここを見てみよう
塩は海水の中だけではない。地下に積み重なった塩の層の、さらに下にも油がある。
ガワールは、このナビの収録データに「油田全体」として対応する項目がないため、公式解説へ案内しています。カードの小さな風景は環境を表すイメージ図で、実際の設備配置を再現したものではありません。
「世界一の油田」は、ひとつに決められる?
何を比べるかで、答えが変わります。
地下にあると見積もる量、技術・採算を考慮して回収できる埋蔵量、これまで採った累計量、ある年に採った生産量は、それぞれ違う指標です。さらに油田の範囲や、油とガスを合算するかでも変わります。
ランキングを見るときは、「何の数字?」「何年?」「どこまでをひとつの油田としている?」の3点を確かめましょう。
今度は、地図の見え方が少し違うはず。
街角のポンプの下には、長い井戸。海上の船の下には、海底のバルブとさらに深い地層。そんな見えない部分を想像しながら、もう一度、世界の油田を探してみてください。
油田ナビの地図へ戻る参考資料・写真の出典について
内容確認:2026年10月。発見年などの歴史情報と、事業者・公的機関の公開資料をもとに編集しました。操業状況・設備・生産量などは変わることがあります。本文の図は仕組みを伝えるための模式図です。
- JAPEX:国内油ガス田と石油・天然ガスE&P
- JAPEX:石油・天然ガスのなりたちと用途
- JAPEX:探鉱・開発・生産の流れ
- EIA:岩石の孔隙・回収率などの用語
- JAMSTEC:掘削技術(科学掘削船の解説を技術の参考として使用)
- JOGMEC:海底石油生産システム
- ConocoPhillips Alaska:発見・生産の歴史
- Petrobras:プレソルトとFPSO
- 資源エネルギー庁:一次エネルギーの動向
- Natural Earth:日本地図の基図(パブリックドメイン)
写真2点の作者・撮影時期・ライセンスは各写真の下に記載しています。冒頭のドット絵は本コンテンツ用のAI生成イラスト。図解と小さな風景画は本コンテンツ用に作成しました。
